十円玉の話
ある夫婦の間に一人娘が生まれました。
その夫婦はどちらも病弱で、ある時母親が亡くなりました。
父親は男一人で仕事と家庭の両立が出来ずに、
とうとう子供を施設に預ける事になりました。
生まれつき知恵遅れの娘でしたので、
施設内の人達も気を付けて対応していました。
時が経ち、その施設は預けられる期限があり、
あと半年で出て行かなければなりません。
施設の人達も、「このままで世に出たらかわいそう。」とか、
「誰か良い人でも嫁にもらってくれないだろうか」等心配して、
せめて残りの期間でお金の価値だけでも
教えてあげようということになりました。
「一円玉」から「五百円玉」まで並べ、
1つ1つ「この一円玉より五百円玉の方が価値があるのよ。
その五円玉より・・・・・。」と毎日毎日教えました。
月日が流れ、残り3日となった時にみんなで集まって、
理解しているか試してみる事にしました。
「このお金の中で、どれが一番価値がある?」
娘は、満面の笑顔で「これ!」と指をさしたのは、十円玉でした。
「何ヶ月も教えたのに、何で憶えてないの!
だからあなたはダメなのよ!
この五百円一番価値があるの。いい加減、覚えなさい!」
とついつい怒鳴ってしまいました。
「じゃあ、もう一度聞くからね。
このお金の中でどれが一番価値がある?」
娘はまた満面の笑顔で「これ!」と指をさしたのは、
やはり十円玉でした。
なんで十円玉なんだろうと思った一人が、
「どうして十円玉なの?」と聞きました。
娘は、満面の笑顔で電話を指さして、
「だって、このお金をあれに入れると、
だーい好きなパパの声がするんだもん!」
周りの人達は、何も言えませんでした。
そして、その中の一人が、
「どっちが知恵遅れなんだろう?」と言いました。
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